アトムの童

 ブログを始めようと思います。

 今まで情報発信として、勤務していた事務所発行のニュースマガジンの記事を書いたことはありますが、ブログのように自ら情報発信するようなことはやったことがありませんでした。そこで、事務所のホームページを立ち上げたのを機に、知財に少しでも興味をもってもらえればと思い、自分の勉強にもなるので、ブログを始めようと思った次第です。ただ、情報発信と言っても、堅苦しい記事ばかりだと長続きしない気がするので、基本は知財に関する内容ですが、気楽な感じで書いていこうかと思います。

 ということで、ブログ初っ端は「アトムの童」についてです。

 ドラマはあまり見ないのですが、「下町ロケット」は、特許が物語の中で重要な要素となっており、知財業界でも話題になりましたので、全話視聴しました。「アトムの童」は、「下町ロケット」のゲーム業界版のようなものとの声がありましたので、面白いかと思い、見始めました。まだ2話までしか放送されておらず、突っ込みどころも多々ありますが、まあまあ面白そうです。

 「アトムの童」でも特許が関連しています。主人公が働くことになった会社が所有する特許権を、敵役となる大手IT企業が獲得しようと、買収を持ち掛けます。他社が保有する特許権のためにビジネスが進められない場合、特許権を譲渡してもらう、特許権のライセンスを供与してもらうという手段が考えられ、「アトムの童」での会社買収も特許権譲渡の一種です。ドラマでは、この会社買収という方向で話が進んでいくと思われますが、自社ビジネスのために他社の特許権が障害となる場合、他社の特許権をつぶすという手段もあります。つまり、他社の特許権を無効にするための特許無効審判を請求します。特許無効審判で特許権を無効化できれば、その特許権に係る発明を誰でも自由に使用することができるようになります。

 特許無効審判は、特許権侵害として訴えられた側の対抗手段の1つとしての使用が一般的です。特許権を無効化できれば、その特許権は初めから存在しなかったものとみなされますので(一部例外あり)、侵害品の差止請求だけではなく、損害賠償請求にも対抗できます。ただ、現在は、特許が特許無効審判で無効とされるべきものと認められる場合には、特許権の行使をすることができないと特許法で規定されていますので、特許無効審判を請求せず、特許権侵害訴訟において、対象の特許権は無効であるとの抗弁(特許無効の抗弁)を行うことが多いようです。

 特許権の譲渡又はライセンス供与を求める代わりに、特許無効審判を請求するというのは多くないように思われ(統計データを調べたわけではなく、個人的な推測です)、ましてやドラマ等では、内容が地味でマニアック的になるので、「アトムの童」のようなシチュエーションで使われることはないと思います。弁理士の立場としては、無効理由等をドラマでどう展開していくのか興味があるところですが…。因みに、特許無効審判を請求できるのは利害関係人だけですが、同業者は大体において利害関係人に該当すると考えられるようです。

以上